反響室の中と外

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Twitterまとめや書ききれなかったこと、映画の感想、日々の妄言等々。

映画視聴記録と感想・2016/09

 劇場新作及び媒体新作について、別記事を既に上げているものに関してはそちらにリンクを張って省エネ兼ネタバレ防止としています。リンクなしの新作については可能な限りネタバレにならないよう気をつけたつもりでは…います…

 旧作(概ね国内でソフトウェア販売及びレンタルが開始されているもの)については、あからさまな記述は避けますがある程度の内容への言及はご了承ください。

 公開年は全て初公開年で統一しています。

 

【新作】

シン・ゴジラ(2016・日)

○イレブン・ミニッツ/11 Minutes(2015・波/愛)

 素直にストーリーだけを飲み込むなら伊阪幸太郎氏の「ラッシュライフ」に近いな、という感想でいいと思います。予告で説明されていることだけであらすじは充分だし、最後に何かが起こるんだろうなあという予測も充分にできる。ただしそれは「素直にストーリーだけを飲み込むなら」。この作品の怖さはメタ的な視点が物語の中にごく当たり前のように紛れ込み、しかも説明されないまま途切れてしまうことにあるのでは。全編に渡って漂い、クレジットが終わってからですら漂う「何か恐ろしいことが始まる前の気配」から、気持ち悪いが故に心地よいざわついた余韻を感じました。

 

ゴーストバスターズ/Ghostbusters(2016・米)

 すみません1984年版見てません。というわけでこれが初見。製作陣も出演者も公開前からずいぶんマッチョイズムな方々のいわれのない悪意に晒されたようですがほんとうに気の毒だと思う。だって男とか女とか関係なくただただかっこよくてみんな仲良しで最高に楽しくて大真面目な「おばか映画」(褒め言葉としての)だったんだもの! 作り手が楽しんでいたら、それは絶対に観客に伝わるんですね。 すごくありがたいコメディ映画でした。

 

○ティエリー・トグルドーの憂鬱/La Loi du Marché(2015・仏)

 原題直訳は「市場の法則」。情状酌量など入り込む隙のない「法則」が、ただの法則を超えて残酷に暴力的に人間を打ち据えるのは、それを振るうのがまた人間だからなのでしょう。どこまでも社会に、状況に、周囲の人間たちに打ちのめされる声なきティエリーは市井の私達に重なるのだけれど、最後に彼が振り捨てたものはなんだったのか。
 作品のほとんどの場面においてティエリーや彼の周囲の様子を映す映像がパーソナルさを強く意識させるカメラワークになっているのに対して、彼が動かすショッピングセンターの監視カメラの映像が(客の万引きや従業員すら監視するものであるにもかかわらず)あまりに広々と自由だったのが痛々しい。

 

【旧作】

グランド・イリュージョン/Now You See Me(2013・米/仏)
グランド・イリュージョン 見破られたトリック/Now You See Me 2(2016・米)

 シリーズ2作目を見る為に駆け足で1作目を予習して行ったのですが、テンポはいいしトリックも面白いしでストレスなく楽しめました。モーガン・フリーマン氏とマイケル・ケイン氏はいるだけで画面が引き締まりますね、さすが名優。
 2作目、悪役で登場したダニエル・ラドクリフ氏演じるウォルター・エイブリーの闇が深すぎて別記事を書き散らしたい。

 

それでも夜は明ける12 Years a Slave(2013・米/英)

 この作品の中で描かれた不正義を、いま、現在の価値観で裁くことは簡単でしょう。簡単だからこそ観客は一旦「いま、現在」から離れてその当時の「常識」と正義の「かたち」を過不足なく受け止めなければならないし、そこから何が起こりどんな流れで「いま」に繋がっているのか、そしてこれからどうしていくべきかに思いを致さなければいけないのだと思います。

 

グッド・シェパード/The Good Shepherd(2006・米)

 ものすごくふんわりした印象だけで(つまりいろいろ語弊があるのを承知で)申し上げますと、TTSSかなと思っていたらオイディプスだった的な。もっとこう国家間の策謀が…とかそこに殉じていく人間が…みたいな部分に萌え萌えするのかと思っていたのだが(勿論そのあたりもおいしく頂けましたが)多分そこより過去と現在を行き来するミステリー式叙述法と、主人公エドワードが避けえなかったあの因果論・因果応報論のような脚本に演劇の妙を感じたんだろうな。

 

○アルゴ/ARGO(2012・米)

 至極個人的な感想になってしまうのですが、私はこれを少なくとも前述のグッドシェパードより先に見ておくべきだった… いやテイストを比べるようなものではないとわかってはいるのですが、物事が臨界点を超えてしまうとき、背景にはもっと重く重く積み重なってきた「理由」があるはずなのに、この作品は(実際の事件を取り扱っている割に)そこにはあまり触れんのやな…と思ってしまい。ひねくれた観客ですみませぬ。


○ビトレイヤー/Welcome to the Punch(2013・英)

 製作総指揮リドスコ氏だったの…!!と見終わった後に知った。予告等々を見た時点でなんとなく先は読めてしまいますが、ミステリー枠でもないのでそこは気にしないぜ。変な脇道少なめでさくさく進む展開や良し。相変わらずヤンキーだけど己は曲げない(が故に世渡り下手そう…)なまかぼい先生と相変わらず悪役扱いだがおいしい役どころのつよし氏が見られて嬉しかったです。あと音楽とガンアクション時の音響効果がよかった。
 原題のPunchって作中の特定の場所を指してますが、辞書で調べなおしたら「beat 〜 to the punch」で「〜(人など)を出し抜く、機先を制する」という意味もあるんですね。多分掛詞なんだろうなあ。英語難民で失礼をば。