反響室の中と外

反響室の中と外

Twitterまとめや書ききれなかったこと、映画の感想、日々の妄言等々。

『ダンサー そして私たちは踊った』/表現をするということ

Title: And Then We Danced (2019)
Countries: Sweden, Geogia, France
Direction: Levan Akin
Writing: Levan Akin
Cinematography: Lisabi Fridell
Editing: Levan Alin / Simon Carlgren
Production Design: Teo Baramidze

「踊るのが好きなのか?」と、あえてメラブに訊いてみたい気がした。質問者である私の自己満足に過ぎない、見え透いた、意地の悪い問いだとわかっている。なぜなら私は、この映画全編を通じて、きっとメラブがこの問いに是とも否とも答えないだろうと予測してしまっているから。
 抑えられない感情に、感情の形すら成す前の衝動に突き動かされてメラブは踊る。民族舞踊はその衝動に与えられたテクニックに過ぎない。メラブという個人にはその手段が最も適切だっただけだ。
 たとえば誰かが絵を描かずにいられないように、造形をせずにいられないように、私が言葉を練らずにいられないように、メラブにとってはそれがジョージアン・ダンスだった。
 だからこそ、その踊りに対して、自らの性指向に対して嵌められた枷に、彼は自身のその身体、その才、その能力のすべてでもって、あらゆるイデオロギーよりナショナル・アイデンティティより根源的な表現の力そのもので反抗する。
 権威者の罵倒も指導者の制止も意に介さず、メラブは踊る。そしてその最後の一礼まで含めて、彼は相手に、そして私たちに向かって突きつける。これが芸術で、これこそが己の生きる姿なのだと。誰にも芸術を、人間の生きようとする力を矯めることなどできないのだと。